白山比咩神社のコラム「神道講話386号」を掲載しています。

神道講話

神道講話386号「そなえよ つねに」

はじめに

ボーイスカウトのモットーに「そなえよつねに」という言葉があります。これは、ボーイスカウトの創始者であるベーデン・パウエル卿のイニシャルにちなんだものですが、この同じモットーを世界中のスカウトがそれぞれの言葉で掲げています。その意味は「さあ来い!いつでも準備はできているぞ」という積極的な日頃の姿勢を示しています。

自然の恐ろしさ

今や日本のみならず全世界で自然災害が起こっています。地震・津波・台風・水害火災・火山噴火など、そして尊い命が犠牲になっています。
自然災害は防ぎようがありませんが、その自然災害が起こる前に、その災害が起こった時にどう対応すれば良いかを考えておくことが必要だと思いますし、その災害に適切に対応すれば、人災は最小限にくい止めることができると思います。
「のどもと過ぎれば・・・」という諺がありますが、過去の災害を教訓に、万が一を想定していれば、想定外という言葉は出てこなくなります。万が一の一に備えることが、常日頃からの準備ではないでしょうか。
その昔から、自然災害が起こると、荒ぶる神を鎮めるために祈りを捧げ、お祭りをしてきました。また、日々太陽の恵みと水や空気などの自然に対する恵みに感謝の誠心としての祭りも執り行ってきました。

白山から見える御嶽山の噴煙(昨年8月)

鎮魂祭

仏教にも「山川草木国土悉皆成仏(さんせんそうもくこくどしつかいじようぶつ)」という言葉があるように心をもたないものでさえ仏性があるとされています。
神道では、全てのモノには霊があり、神様が宿っているという思想で、ひとつの霊には四つの魂があるという考え方つまり、「和魂(にぎみたま)」「荒魂(あらみたま)」「幸魂(さちみたま)」「希魂(くしみたま)」のことであります。
そして、その「荒魂」がすさんで災害などが起こるとされています。
そのすさんだ魂を鎮めるのが「鎮魂祭」であります。

1300年という節目

霊峰白山も明年は開山1300年を迎えますが、350年から400年周期で噴火が起きているといわれており、近年その周期にあたるとして警戒を強めていますが、地球創世46億年から見れば、400年はあっという間の一瞬に過ぎません。
今の豊かな生活を有難く受けとめ、いつかは来るであろう災害に対して物心両面で備えましょう。

「備えあれば憂いなし!」

むすび

さて、幸せとは何でしょうか。それは「命がある」ことへの感謝だと曽野綾子氏は言っています。
苦しみに耐えて始めて楽しみがわき、悲しみを越えて喜びがあるのであります。
今の日本の人々の中には「今日命があることを感謝する謙虚さ」や「動物のように雨の中で濡れずに蒲団に寝られることを幸福と感じる能力」や「生涯の使い方に関する基本的な喜び」などが欠落している。そして何よりも貧しくなったのは、ものごとの結果を最低二面以上の相反する複数の視点から見る勇気も能力も衰え、将来ある子供達に教育もその訓練もしないことであります……。
山登りというものは、山頂にたどり着いた時がゴールではありません。無事に下山して始めて山登りは完遂するのであります。
幸せを山とすれば、苦しんで登頂しすばらしい自然を満喫し、また、下山に汗を流し、その苦しみを越えることによって喜びが増します。
生きるということは、命があるということ。自己防衛力をつけ、常に災害に対する意識をもちましょう。

お日の出を拝したあとの万歳三唱