白山比咩神社のコラム「神道講話403号」を掲載しています。

神道講話

神道講話403号「祈りと人工知能(AI)」

はじめに

豊かな秋の実りを迎え、新嘗祭をご奉仕する季節となりました。
今年の初めから当地方は大豪雪に見舞われ、樹木も折れ、除雪作業など大変な苦労をしました。
そして夏の猛暑と日照り続きで、畑の土はカラカラ、蚊やハエ・アブの発生も少なく、また白山室堂では水不足により食器が洗えず、紙容器で対応したのでありました。
その中にあって夏の陽ざしは、稲にとっては大きな恵みとなり、頭を垂れる稲穂は、私達に生きる力を与えてくれました。
また、日本列島大きな自然災害が起こり、各地で被害が報告されました。別けても台風による被害と豪雨・地震による被害は大変なもので、犠牲になられた御霊の御平安を祈り、被災されました地域の皆様方には心からお見舞い申し上げます。

見事に実った黄金色の稲穂

農とAI(人工知能)

さて、日本はEUと同様に少子高齢化が進み、いづれ中国も10年後には同様と言われておりますが、そうなると労働力が不足する事となり、食糧生産も先進技術が必要となります。
先般、金沢工業大学の今後の研究についてお話を伺うことが出来ましたので、一部をご紹介致します。
まずロボットを用いた「植物工場」の社会実装研究であります。
太陽光と水と空気など、植物にとっての自然環境をモニタリングセンサーによって管理し、小水力発電などのクリーンエネルギーによって稼働、建造物や環境土木も整え、情報工学をバイオ化学によって、ロボットの開発、AIを用いて、不用なイチゴの芽や葉を間引きします。
この技術は、農業従事者の永年に亘る実績をAIに組み込ませることによって実現します。

「Society5.0」実現のための社会実装研究(〜5年に実現)

次に野生動物との共存を目指した「獣害対策」の社会実装研究です。
野生動物をAIによって撮影画像から動物を検出分類する、つまり「見える化」技術を開発。遠隔・無人化のロボットを用いて動物を畑の外に誘導するといった獣害対策を開発。尚且つ、このロボットのエネルギー源として落葉によるバイオマス発電の研究も進めているとの事であります。
これは、ほんの一例でありますが、この他にも地域産業分野・エネルギー分野・福祉医療分野・電子基盤の分野など、地域課題の解決により世界課題の解決へ繋がる研究がなされています。
金沢工業大学は、先に国連加盟の一九三ヶ国が採択したSDGs(持続可能な開発目標)に関する取り組みが認められ、第1回ジャパンSDGsアワード(官房長官賞)を受賞しています。
このSDGsは世界を変えるための17の目標があります。

AIによって撮影画像から動物を検出・分類する技術(金沢工業大学の取り組み)

AIと職種

新聞報道によれば、人口知能(AI)やロボットの開発の進展により、2025年までに半数以上の仕事はロボットなどの機械が担うことになると予測する報告書が世界経済フォーラムで発表されました。
2022年には7500万の今ある職が失われる一方、自動化で1億3300万の新たな仕事が創出されると言います。
近年大学生の就職活動は、5年先、10年先に消えそうな職業をきらい、長く勤められる職種を選ぶ傾向があるといいます。
具体的には、経理やデータ入力などの事務従業者は不要となり、科学者やソフトウエア開発者・ソーシャルメディア専門家らの需要が増え、営業や顧客サービスなど対人の仕事の必要性が高まります。
そして(労働者が)新たな仕事に就くためには技能向上や再訓練が欠かせないとし、特に交通や医療・科学などの業界で再教育が進められるとしています。

むすび

異常気象による自然災害は地を震し、大地を切り裂き、集中豪雨は小止みなく、その水は河川を溢れ、あるいは堤防も決壊し、田畑も水浸し、せっかく作った作物も収穫を待たずに腐ってしまいました。人間がすべてを把握出来ていないのが自然であり、人知がすべてに及ばないため「想定外」は起こります。
私達は、謙虚に自然の恵みに感謝し、自然の脅威に畏怖の心を内包しながら互いに労り合って、災難を乗り越えなければなりません。
人は、動物・植物のいのちを頂いて生きているのであります。
そのいのちに感謝し、自然の恵みと、先進技術を以て食糧難にも立ち向かい、祈りの中に幸せを感じることが大切ではないかと思います。
物理的先進技術によるロボットAI農林業を始め、発電と蓄電の技術、遠隔地でのヘルスサポートや健康維持、画像認識技術による獣害対策などを上手に活用し、精神的に心を豊かに、全て生きとし生けるものの幸せを祈るものであります。

祈りの姿