白山比咩神社のコラム「神道講話404号」を掲載しています。

神道講話

神道講話404号「御即位30年と御代替り」

◆ はじめに

日本の皇室は、世界最古の王室であり、その悠久の歴史は「古事記」「日本書紀」といった書物から起源を窺い知ることができます。
当社の御祭神伊弉諾尊が、黄泉の国で菊理媛尊の「おことば」をお聴きになり、現世に帰られて禊をなさり、多くの神々をお産みになり、最後に左の目を漱ぎ現れた天照大御神は、御孫瓊瓊杵尊を高天原より地上にお遣わしになりました。
以来、我が国では、天照大御神の御子孫が代々天皇として御位をつがれ、日本の国を治められると共に、天照大御神をお祀りされてきました。
そして、大御神から授けられた稲によって稲作を行い繁栄してきたのであります。
天皇の御代替りに際しては、様々な儀式が執り行われますが、そこには、この神々の時代の精神が息づいています。儀式そのものは、時と共に変化してきましたが、大嘗祭を始めとする皇位継承の諸儀式は、厳粛かつ伝統と格式に満ちたもので、神代より現代にまで受け継がれてきた我が国の精神の継承の儀式であるといえます。

即位礼正殿の儀(H2.11.12)提供 宮内庁

◆ 御即位三十年奉祝

天皇陛下は、平成31年4月30日に御退位になり、翌5月1日、新帝陛下が御即位されます。この30年、陛下は国民と苦楽を共にされ、広く世界の平和と人々の安寧を祈ってこられました。
平成29年11月には、2巡目の全国47都道府県すべての行幸啓を果たされ、同時に世界各国を歴訪され、広く国際親善に尽くしてこられました。
平成28年8月、陛下は次のように述べておられます。
「私はこれまで天皇の務めとして、何よりもまず国民の安寧と幸せを祈ることを大切に考えてきましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えてきました」
このお言葉にある「人の傍らに立ち、思いに寄り添うこと」を常に大切になさりつつ、陛下は平成の御代を歩んでこられたのです。

即位礼正殿の儀で、着用される天皇陛下の袍の色は「黄櫨染(こうろぜん)」、皇太子殿下の袍の色「黄丹(おうに)」と定められており、これは天皇陛下、皇太子殿下のみ着用できる色であります。

黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)
天皇特有の御束帯の袍の位色。櫨の樹皮と蘇芳(すおう)から染めた赭(あか)黄色。

黄丹袍(おうにのほう)
東宮特有の位色。朝日が上る曙を連想させる黄味がかった赤色。

◆ 自然災害

大地震や台風・豪雨と我が国は度重なる大規模自然災害に襲われ、想像を絶する困難に遭遇してきました。
両陛下は、大規模自然災害のたびに、被災者を直接お励ましになることを強くご希望になり、その後も引き続き被災地を見守ってこられました。
両陛下は人々の声にじっと耳を傾けられ、優しく労りのお言葉をおかけになります。
平成23年3月、東日本大震災に際しては「被災地の悲惨な状況に深く心を痛めています」「被災者の状況が少しでも好転し、人々の復興への希望につながっていくことを心から願わずにはいられません」とお見舞のお言葉を述べられ、「国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています」と呼びかけられました。

◆ 戦歿者追悼

両陛下は、今日の我が国の平和と繁栄が多くの戦歿者の上に築かれていることを心に刻まれ、世界の平和を祈ってこられました。
6月23日の沖縄戦終結の日、8月6日の広島原爆投下の日、8月9日の長崎原爆投下の日、そして8月15日の終戦記念日の4つの日には、必ず黙祷を捧げていらっしゃいます。
また、両陛下の「慰霊の旅」は国内にとどまらず、サイパン島、パラオ共和国のペリリュー島、フィリピン国やベトナム国をご訪問され、両国の友好親善を図り、併せて先の大戦の戦歿者に慰霊の御心を捧げられました。
終戦より70有余年、陛下は戦歿者・遺族・被爆者のことを片時もお忘れになることなく、深い思いを寄せ続けておられます。

◆ むすび

平成31年4月30日を以て、天皇陛下が皇太子殿下に天皇の御位をお譲りになられることとなりました。
これを「譲位」といいます。これは、文化14(1817)年に光格天皇が仁孝天皇に譲位されて以来、約2百年ぶりのこととなります。
権威と象徴の天皇陛下は、御歳84才をお迎えになられます。
そして、御即位30年を迎えられました天皇陛下に心から奉祝と感謝のまごころを捧げるべく、2月24日には内閣の行事として天皇陛下御在位30年奉祝記念式典が挙行され、天皇皇后両陛下御結婚満60年の記念日にあたる4月10日に東京国立劇場大ホールに於て、御即位30年奉祝感謝の集いが催されます。
また、御代替りに伴い、新元号元年5月1日(木)と同年10月22日の即位礼の日は、本年に限り祝日となる予定であります。
私達国民はこぞって心からなる奉祝と感謝の赤誠のもと、門毎に国旗を掲げてお祝い致しましょう。
御譲位にかかる全ての諸儀式が古式に従い恙なくおごそかに行われることを、切に希望するものであります。

悠紀殿供饌の儀(H2.11.22)提供 宮内庁