白山比咩神社のコラム「神道講話405号」を掲載しています。

神道講話

神道講話405号「御代替り」

◆ はじめに

今上陛下の御譲位が明治天皇の曾祖父であり、孝明天皇の祖父にあたる光格天皇第119代以来202年ぶりのことと言われています。 光格天皇は、天明七年の飢饉により人々が苦しんでいた時、幕府に対し、いち早く窮民救済を申し入れました。その時の大嘗祭での御製は、

 身のかひは
 何を祈らず 朝な夕な
 民安かれと 思うばかりぞ

 (自分のことで何も祈ることはない。朝な夕なに民安くあれと思うばかりである)

とあります。
光格天皇の「民安かれ」「国平らかなれ」の祈りが、仁孝天皇・孝明天皇・明治天皇と受け継がれ、明治維新となり、そのご意志が大正天皇、昭和天皇から今上陛下へ、そして今、正に126代の天皇へと御譲位なさるのであります。

新年用御一家(平成31年1月1日) 提供/宮内庁

◆ 元号のはじまり

元号は現在「平成」でありますが、今年の御譲位により5月1日に新天皇が御即位されるにあたり、元号も改められます。
今は「一世一元」としておりますが、これは明治元年(1868)9月8日の詔で、天皇一代の年号をひとつだけに定められました。
それまでは、天皇の御即位・祥瑞・災異あるいは政治上の大変が起こるとされていた辛酉・甲子の年にあたるなどの理由で、一代に数回の改元が行われていました。
元号は年号ともいい、日本や中国などで年に名付ける称号のことを言います。安政とか明治・大正・昭和などの類であります。中国では漢の孝武帝のとき、建元と号したのに始まりますが、日本では第36代孝徳天皇のとき、大化と定められたのを創始としております。

◆ 元号の公布

所功氏(京都産業大学名誉教授・日本法制史)によれば、本来は改元の政令は新天皇が5月1日の即位後に署名し、公布すべきであります。
元号法は「皇位の継承があった場合に限り改める」と明示しています。
皇太子様が、法的に新天皇になられ、「御璽(ぎょじ)」(天皇が国事行為で使う印章)などを受け継ぐ儀式を経て「継承があった」状況になるので、改元の政令は、新天皇の即位後でなければ正式に公布できないと解釈すべきであり、今の天皇陛下が公布するのは不自然であると言っています。
この度の元号は、国民生活への影響から4月1日に閣議決定し国民に公表、政令の公布は今上陛下が行われ、施行日は新天皇ご即位の5月1日としています。
日本会議としては、御代替り前の元号の決定・公表は、歴史上なかったことであり、今回の元号制定方式が、将来の先例とならぬよう求めています。
そして、政府においては、新元号が新天皇の御代を象徴するものであることの重みに改めて留意され、公布にあたっての皇太子殿下へのご報告、国民への定着に万全の努力を払われるよう強く要望しています。

元号選定手続きのポイント

〇首相が高い識見を有する者若干名に、2〜5の候補名考案を委嘱
〇官房長官は
 ① 国民の理想にふさわしい
 ② 漢字2字
 ③ 書きやすい
 ④ 読みやすい
 ⑤ 過去に使われていない
 ⑥ 俗用されていない
 ―に留意し整理
〇官房長官は新元号の原案として数案を選定。各界有識者を集め「元号に関する懇談会」を開催し意見聴取。衆参両院の正副議長にも意見を聴く。全閣僚会議で協議
〇閣議で改元の政令を決定

平成31年2月9日付北國新聞朝刊参考

◆ むすび

今後の祭典については、

◎「天皇皇后両陛下御結婚満六十年奉祝祭」は両陛下の御結婚日である平成31年4月10日に斎行。
◎「御譲位御安泰に関する祭祀」は「神宮に親謁の儀」が行われる4月18日から譲位の日である4月30日の間での適宜の日。
◎「践祚改元奉告祭」は新帝践祚の5月1日以降。
◎「即位礼当日奉祝祭」は10月22日。
◎「臨時大祓」は11月12日。
◎「大嘗祭当日奉祝祭」は11月14日。

※「退位礼当日の祭祀」については、新帝践祚に斎行される「践祚改元奉告祭」の趣旨に鑑み行ないません。

今上陛下は去る平成30年12月23日のお誕生日に際し、「来年春に私は譲位し、新しい時代が始まります。多くの関係者がこのための準備に当たってくれていることに感謝しています。新しい時代において天皇となる皇太子とそれを支える秋篠宮は共に多くの経験を積み重ねてきており、皇室の伝統を引き継ぎながら、日々変わりゆく社会に応じつつ道を歩んでいくことと思います」とのお言葉を述べられています。
私共国民もこぞって、天皇陛下の御在位30年をお祝い申し上げつつ、新天皇の御即位を慶祝いたしまして、新たな御代を全世界に発信し、世界に冠たる皇統と連綿たる理想のもと希望に満ちた明るい日々が永遠に続くことを願うものであります。