白山比咩神社のコラム「神道講話406号」を掲載しています。

神道講話

神道講話406号「令和」を慶ぶ

◆ はじめに

5月1日午前零時より皇太子殿下が新たな天皇陛下に即位され元号も前日までの「平成」が「令和」に改められました。
1日の始まりは、その昔は日没が1日の始まりとされていましたが、感覚的には、夜明けが1日の始まりでも良いとされた時期もありました。現代は真夜中の午前零時が1日の始まりとされています。
時代の変わり目に遭遇し、まるで時間が止まったようなこの瞬間、そして夜明けを迎えた時、何ともたとえようのない喜びがこみ上げてきました。

昭和55年8月21日 浩宮徳仁親王殿下御参拝

◆ 践祚と御即位

元来、皇位を継承する儀式を「践祚」と呼び、継承したことを宣言して祝意を受けられる儀式を「即位」と呼び分けておりましたが、現代の皇室典範では「国事行為」としての「即位」の語だけが記されており、「皇室行事」の「践祚」は意義が薄れてしまっているのが現状であります。
践祚の式は、皇位継承の儀式として、先ず剣璽等承継の儀が行われます。
皇位は、1日たりとも空白は認められませんので、皇位につかれた新帝陛下は、「三種の神器(しんき) ※1」をはじめとした皇室に由緒ある品々や天皇陛下の御印である「御璽」と日本国の御印である「国璽」が継承されます。

※1 三種の神器とは、歴代天皇に皇位のしるしとして継承されてきた八咫鏡・天叢雲剣(草薙剣)・八坂瓊曲玉のことを申します。

剣璽」が継承されるのと時を同じくして、宮中三殿では新帝が御位につかれた旨を天照大御神(賢所)・歴代天皇と皇族の御霊(皇霊殿)・天神地祇(神殿)に奉告される賢所の儀・皇霊殿神殿に奉告の儀が行われ、その後、皇居に於いて「即位後朝見の儀」として、内閣総理大臣ほか三権の長、地方自治体の代表などを御前にお召きされ皇位につかれた旨を宣言されます。ここまでが践祚の式であります。
即位礼は、先ず賢所・皇霊殿・神殿に於いて即位礼・大嘗祭の期日を天皇陛下親ら御奉告されます。
そして、即位礼当日賢所大前の儀のあと、即位礼正殿の儀が行われ、即位を全国の国民・諸外国に対し、高御座に登られ高らかに宣明されます。

◆ 元号「令和」

改元は天皇一代に一つの元号とする「一世一元」制により、4月1日首相官邸に於いて菅義偉官房長官が「令和」と書かれた書を掲げ、広く国民に示されました。
この出典は、現存する日本最古の和歌集「万葉集」です。

この度の新元号は、248番目の元号となり、即位される5月1日午前零時に施行されます。
日本古典からの採用は、初めてで、意味は「人々が美しく心を寄せ合う中で文化が生まれ育つ」とされ、安倍晋三首相は「広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に根差していくことを願う」と申しております。

新元号の2文字の意味

◆ 上皇・上皇后

譲位により皇位を後継者に譲った天皇陛下の御尊号を「太上天皇(だいじょうてんのう・だじょうてんのう)」と申し上げ、また皇后陛下の御尊号は、伝統的には「皇太后」との称号が使われてきましたが、「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」の規定に従って、天皇陛下は「上皇」皇后陛下は「上皇后」となられ、敬称は陛下とされます。

◆ むすび

昭和20年代生まれの私たちには、長く慣れ親しんだ昭和・そして平成につぐ「令和」の時代が幕を開けました。
子供の頃は、食べ物も着る物も不足していましたが、皆が助け合い、心豊かに活気あふれる時代を過ごし、平成が終わるまで、戦争は一度もありませんでした。
欲を言えば、これからも自然災害などなく、皆が共々に力を合わせ、明るい平和な世の中であることを心から願い、私たち国民は、平成の御代をかえりみ、陛下の御事績に想いを致すとともに、新帝陛下の御即位を挙ってお祝い申し上げるものであります。