白山比咩神社の「シリーズ企画 自然と生きる⑦「ジオパークの恵みと資源を白山市民の誇りにしたい」」を掲載しています。

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シリーズ企画 自然と生きる⑦
「ジオパークの恵みと資源を白山市民の誇りにしたい」
−白山手取川ジオパーク推進協議会会長 山田憲昭様を訪ねて−

(令和4年1月)

当社とご縁のある中から、自然を敬い、慈しみながら、日々の生業を営む方々の姿をご紹介します。

白山手取川ジオパーク
白山から手取川を経て日本海に至る水の循環が育んだ環境に着目し、その対象となる白山市域全体の自然遺産を保全しながら、地域の教育や経済に活用することを目的とした「大地の公園」。
平成23(2011)年に日本ジオパークに認定され、現在は国内推薦を受けて、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界ジオパーク認定に向けて審査が進められています。

(写真)白山手取川ジオパークのイメージキャラクター「ゆきママとしずくちゃん」と並ぶ山田憲昭会長。


白山市の自然を地域の発展に活かす「白山手取川ジオパーク」の活動。白山市長であり、推進協議会会長を務める山田憲昭さんに、ジオパークが目指す未来像についてお話をうかがいました。


暮らしすべてが白山の恵み


― 白山麓のご出身者として、白山とはどのような関わりをお持ちですか?

昨年はコロナ禍のために断念したのですが、毎年夏に、白山商工会議所や市の新規採用職員と一緒に白山に登ることを恒例行事にしています。早朝に御前峰から雲海の向こうに輝く御来光を眺めると、神秘的な光景に感謝の念が湧いて、「また来年もここへ来たい」という気持ちになります。願わくは80歳を過ぎても登り続けたいものです。
私は現在の吉野谷地区に生まれ、少年時代は山で虫を捕ったり、川で泳いだりと、周囲の自然が遊び場でした。そんな白山の豊かな自然環境は、今も市内外から登山客をはじめとする多くの人々を引き付ける魅力となっています。この地域をふるさとに持つ者の一人として、美しい白山を将来の世代に引き継いでいく責務があると感じています。

― 白山手取川ジオパークを形作った白山からの水は、白山市民にどんな恩恵をもたらしたとお考えですか?

本ジオパークの最大の特徴は、市民が生活する市街地を含めた白山市の全域が対象であることです。エリア内にショッピングモールがあるジオパークは世界でも類を見ないと聞きます。
白山市域では白山の山頂周辺から桑島化石壁、手取峡谷、手取川扇状地に至るまで、水が大地に創造した地形の上で古くから人々が営みを続けた結果、重要伝統的建造物群保存地区の白峰や北前船が寄港した美川などが繁栄し、日本酒やフグの卵巣のぬか漬けに代表される発酵食文化も花開きました。もちろん白山比咩神社もそうした営みの長年にわたる担い手です。白山市の歴史や伝統はすべて水の恵みとつながっており、この地域の暮らしそのものが白山からの恩恵ではないでしょうか。

(左)全国から登山客が集まる夏の白山。
(右)手取川の流れが平野部に築いた扇状地。


ふるさとを知って誇りに


― 日本ジオパークへの認定以来、ジオパークの資源の教育や観光での活用に関しては、どのような施策に取り組んでいらっしゃいますか?

ジオパークにおいては、地質や地形などを保護する一方で、自然や歴史・文化的に価値のある場所を見どころとなる「ジオサイト」として地域の内外に発信していく必要があります。すでに市内の小中学校で行っている「ジオ遠足」や各種学校における「ジオパーク学習」などは、地元の子どもや若者にジオパークを通じた学びを提供する教育プログラムです。今後はスタディーツーリズムにも活用し、修学旅行の誘致などに努めていきます。
こうした活動により、白山市民がジオパークへの理解をさらに深め、ふるさとの豊かな自然や文化資源に対する誇りを持っていただけることと思います。ジオパークは地域の人々に自然を活かそうとする意識がなければ維持できません。市民が地元の良さを再認識できれば、おのずと観光の振興も図られると考えています。

― 市外への発信に、観光の玄関口である白山白川郷ホワイトロードなどはどのように活用していきますか?

ホワイトロードはそれ自体も重要な観光資源であり、自動車で走りながら白山の雄大な自然を満喫できます。毎年6月に冬季閉鎖が解除される際には、白山麓全体の空気が一新される印象を受けます。
本市でも片道無料キャンペーンなどによる誘客促進を図るだけでなく、白山白川郷ウルトラマラソンのコースとしても活用しています。コロナ禍が明ければ、改めて全国のランナーに白山の魅力に触れていただきたいですね。この大会では隣接する川北町や岐阜県白川村とも連携しており、県境を越えた白山麓の広域連携にも重要な役割を果たしています。

白山の自然環境の貴重さを語った山田会長。


白山市を発信する第一歩


― これまでの活動を踏まえて、今後の白山手取川ジオパークについて、推進協議会会長として描くビジョンを教えてください。

本ジオパークには、大地の形成とその恵みや自然と共生する中で育まれた歴史・文化を多彩な物語として楽しむことができる世界的にも稀有な個性があります。一昨年に国内推薦を受け、日本で10番目となるユネスコ世界ジオパークへの認定に取り組む中で、今年10月には日本各地のジオパーク関係者が集まる全国大会を開催することになりました。
こうした出来事は白山市が有する美しい自然環境とそこで培われた伝統文化を国内外に発信する絶好の機会です。外部からの評価もいただきながら、SDGsの推進を含めたジオパーク全体の魅力向上に励んで、世界に誇れる地域づくりを目指していきます。

(左)白山麓の自然の中を走る白山白川郷ウルトラマラソン。
(中)子どもたちがふるさとの見どころを学ぶジオ遠足の一場面。(石川ルーツ交流館)
(右)白山からの水が切り立った手取峡谷を流れる。

記・構成・中道大介(高桑美術印刷)