神道講話365号「神様からの預かりもの」
はじめに
日本の三名山として称えられる霊峰白山は本年国立公園指定50周年を迎えました。
石川県側の登り口である別当出合から標高2,702メートル(8,917尺)の頂上までは、白山比咩神社奥宮の境内地であります。
そして、境内地の内、登山道と室堂平・南竜ヶ馬場を、それぞれ国・県に賃貸し、石川県はそこに室堂ビジターセンター・宿泊棟、南竜山荘・キャンプ場・ケビンを建て、室堂平は指定管理者として(財)白山観光協会に、南竜ヶ馬場は白山市地域振興公社に管理依託して営業を行っています。
本年は、白山観光協会が独自に宿泊棟「白山雷鳥荘」を新築し営業を始めます。
白山観光協会の理念は、「霊峰白山のすぐれた観光資源を保護開発するとともに、観光諸施設の整備を図り、白山観光を通して国民文化及び厚生の向上発展に寄与し、併せて国際観光の発展に貢献する」というものであります。
自然公園法
白山の奥宮境内地は国立公園の特別保護地区に指定されております。
自然公園法は、昭和33年、優れた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ることにより、国民の保護・休養及び教化に資するとともに、生物の多様性の確保に寄与することを目的として定められ、そして、国立公園、国定公園及び都道府県立自然公園からなる自然公園を指定し、平成22年には、生態系維持回復事業に関する規定が加えられました。
特別保護地区では、特に重要な地区として樹木の損傷、動物の放鳥獣(家畜の放牧を含む)、植物の植栽、播種、物の集積・貯蔵、たき火は許可を要する行為と規定されています。
また、この法律の内容に、国立公園は環境省が管理し、国定公園・都道府県立自然公園は都道府県が管理するとなっています。
今の日本では、地権者がそれぞれあり、国有地は国が、都道府県市町村有地はそれぞれの都道府県市町村が管理し、民有地は、それぞれの民間が管理するのであります。
そして、全てのものには所有者がおります。誰もがその土地や建物、動植物を断りなしに使用したり、採ったりしてはならないし、各個人の敷地内や建造物、特に庭や畑などは無断で立ち入ってはならないところであります。
現今、グリーンワーカー事業として、環境保全事業が実施されていますが、外来植物・外来動物についても所有権など、より詳らかな判断が望まれるところであります。
タカヤマ ノボルという人
今から30年も前の話ではありますが、金沢のとある居酒屋で横に座った人は高山登(たかやまのぼる)という人で、世界の名峰に登り、写真を趣味としておられる方でした。
そして、この方はこよなく高山植物を愛した人でした。
白山に登る時には、特に高山植物や樹木の根を傷つけないように、そして、常に土壌を固めないようにと地下足袋で歩くんだと言っていたことを思い出します。
高山植物
高山植物とは、高山帯を本来の生育地とする植物。高山帯とは、高度による気候的高木限界を超えた地域であって、標高約2,500メートルあたりから上に現れてくる。
低いところに普通に生えている種類であって、適応の幅が広いために高山帯まで上がっているものは高山植物とは言わない。
遠い先祖は同一のものでも、北方の寒冷地と高山とでは平均気温は似ているが、他の生活条件にはいろいろ差異があるから長い年代の間には、それぞれの土地で別途の進化が起こり隔離作用も加わって特産種や独自の変種を生む。
(平凡社 国民大百科事典より抜粋)
おわりに
私たちの生活は、自然から恵みを受けて生かされて生きているのであります。
梅原猛先生は「草木国土悉皆成仏」、草や木も、国も土も生きている。そして皆仏性を持っている。天台宗と真言宗が合体したのが、天台密教で、天台本覚思想であると言っています。
全てのものに命が宿っている、どんな小さな命でもそれはかけがえのない命であることを確信し、自分の命をつなぐ為に、必要な分だけを感謝の気持ちで戴くのであります。
その全ての命は、等しく神様が与えて下さった命であり、預かりものです。白山の神様に感謝し、動物も、植物も皆で護って行かなければならないと思います。