神道講話370号「更衣 ― ころもがえ」
はじめに
「ころもがえ」は衣替えとも書き、季節によって衣服を改めることで、現在では6月1日と10月1日が更衣の日とされている。
今の更衣は明治期に定着したもので、学校や職場で制服を着る習慣が一般的に行われるようになったからなのであります。
古くは平安時代の貴族社会で、旧暦4月1日(本年は5月10日)が更衣の日とされていましたが、これは宮中の世界に限られていました。その後近世に木もめん綿が普及して衣服が多様化したのに伴い、武家社会では真夏に帷子(かたびら)(麻糸で織った和服、又裏地をつけないひとえの衣)、春秋には袷(あわせ)(表と裏と2枚の布を合わせて作った衣)冬には綿入れ(表と裏との間に綿を入れた衣服)などが四季に応じて着用され、端午の節句(5月5日)と重陽の節句(9月9日)を更衣の日とする風習が広まったとされています。
神御衣祭
当社では、白山比咩大神の更衣を神御衣祭(かんみそさい)と申し上げ、春は5月5日(例大祭の前日)秋は10月23日(豊年講秋季大祭)に執り行っております。
そして、その日に合わせ神職の白衣や袴、祭典などで着用する正服や狩衣などの装束類を冬物(絹織物)から夏物(麻織物)へ、あるいは夏物から冬物へと衣替えするのであります。
礼服・礼装
辞書には「礼服とは儀式のときに着る規定の衣服であり、礼式にかなった服装をいう。」とあります。
婚礼などを例にとると、近親者や主賓クラスの人は昼間の結婚式・披露宴の場合、男性の正式な礼装はモーニング、夜は燕尾服(えんびふく)かその略装であるタキシード、一般に友人として出席する場合は略礼服でもよいされています。(略礼装を準礼装と表記されている事もあります。)
招待客は昼夜を問わず略礼服の黒のスーツかそれに準ずるものが一般的で、上着はシングルでもダブルでもかまいませんが、シングルはベストを着用します。シャツは白、ネクタイは白または白と黒の斜め縞、またはシルバーグレーです。
女性は洋装の場合、昼はインフォーマルドレス、夕方から夜はイブニングドレスかカクテルドレス、和装では未婚女性は振袖、既婚女性は留袖、または既婚・未婚を問わず訪問着を着用します。
クールビズ
環境省は夏期の軽装化キャンペーンで、室温摂氏28度でも涼しく効率的に働くことが出来るような軽装全般を「クールビズ」として推進しており、クールとは「涼しい」「格好いい」、ビズは「ビジネス」の短縮語で仕事や職業の意味を表すことばであります。
上着を着ていれば失礼にあたらないのか、ネクタイをしていれば上着を着なくても良いのかわかりませんが、ビジネスと言うくらいですから仕事(デスクワーク等)の時はネクタイをはずした開襟でも良いとは思います。
しかし、最近あらたまった席でもネクタイを外している公人を見かけることもあり、儀礼や式典の時はいかがなものかと思います。
神社参拝・祭礼
伊勢の神宮へ参拝の時には御垣内参拝や神楽殿ではネクタイに上着着用となっており、放送関係者の撮影も内宮ではご正宮正面石段の下迄となっております。
又、鶴来地区のほうらい祭では御輿の供奉は紋付袴姿でありますし、各神社の例大祭の参列は主な人々は略礼服かダークスーツなのであります。
おわりに
近年伊勢の神宮でも、夏場の参拝などは、都会の繁華街のような、目を覆いたくなるような服装の若者が多く見うけられますが、その中にあってご年配の方や、心ある人々がネクタイに上着着用で整然と参拝している姿には感動をおぼえると同時に頭が下がります。
神社はその人の「至誠」をそのままに映し出します。これから暑い夏を迎えますが、不敬にならない服装で、国の隆昌と世界の共存共栄、ご皇室の安泰を心から祈りたいものです。