白山比咩神社のコラム「神道講話377号」を掲載しています。

神道講話

神道講話377号「白山開山にあたって」

はじめに

霊峰白山は神様の鎮まり坐す神体山として今から約2,100年も前から崇敬されてきました。
伝説によればその神山に初めて登拝したのは、養老元年、西暦717年の6月18日に越前の僧泰澄が登頂し、登拝という型が形成されました。
これが白山修験の起りとされ、したがって、西暦2017年(平成29年)は西暦717年から数えてちょうど1300年となります。

白山登拝の歴史

白山登拝は時代によって変化がありますが、開山以来女人禁制の修験の山として、加賀、越前、美濃の三方より登山道が開かれ、登山口にはそれぞれ馬場がもうけられ、加賀側の馬場が石川県白山市の白山本宮加賀一ノ宮白山比咩神社であり、越前側の馬場が福井県勝山市の平泉寺白山神社、美濃側の馬場が岐阜県郡上市の長滝白山神社であります。
そして、それぞれの馬場を本拠地として、加賀馬場は大汝峰に加賀室を、越前馬場は御前峰に越前室を美濃馬場は別山に美濃室を形成し、それぞれ隆盛を極めました。
江戸時代は幕府の直轄地「天領」として治められておりましたが、時代も明治に入り大政奉還もあって、白山は国家管理となり、女人禁制も解かれ、明治5年からは老若男女、だれでも登れる山となり、戦後は国定公園から国立公園となり、石川県側の登山口から頂上迄は白山奥宮の境内地として白山比咩神社がお預かりしております。(福井県側と岐阜県側は国有林として管理されております)

白山の三山 手前から大汝峰・御前峰・別山

白山開山1300年記念事業

白山開山1300年を奉祝し、様々な記念事業や行事が企画されつつありますが、その手始めとして白山室堂平の白山奥宮祈祷殿と社務所の建替工事が本年より三年計画で実施されます。
又、白山比咩神社御鎮座2,100年式年大祭を記念しての神社史の発刊は、既に「図説白山信仰」、「増補改訂版図説白山信仰」、「白山信仰史年表」が出版されましたが、引き続き「白山信仰通史」(仮称)の刊行に向け作業が進められており、白山開山1300年を区切りとして、先ずは古代中世編を今年度中に発刊の予定であります。
その他、巡拝会、講演会やコンサート等、又牛玉宝印三社巡りや、白山神社名鑑(仮称)、白山麓の文化財の紹介などを計画中であります。

山の日のこと

先の国会にて、8月11日を新たに「山の日」として祝日と定める「国民の祝日に関する法律」の改正案が可決・成立いたしました。再来年の平成28年から 「山の日」がカレンダーに加わることになります。
森林の環境保護、活用、植樹や育樹等、山に関わる私共としては「山の日」制定は「海の日」に対する「山の日」であり、祝日のなかった8月に祝日が増えるのは喜ばしいことではありますが、なぜ8月11日なのかいささか疑問を抱きます。
近年の祝日改定は、ただ休日を増やすことが主目的となって、3連休を増やすためにいわゆる「ハッピーマンデー」制度などによってわざわざ意義ある「成人の日」「敬老の日」「体育の日」等の特定日の祝日を月曜日に移し変え、また、祝日と祝日の間に挟み込まれた「みどりの日」やその後日の「国民の休日」など「ご縁日」の意味が薄れているのはいささか残念に思います。

霊峰の開山

主な霊峰の開山を調べてみると、
「富士山」は開山年をヤマトタケルが東夷を討伐の際、北口登山道が開かれたときとしている。初めて登山をしたのは701年役行者の伝説が有力である。月日は不明だが、本年は7月10日が開山。
「立山」は701年に越中国司佐伯有若の子有頼が白鷹と黒熊に導かれ開山。月日は不明。
「石槌山」は開山年は不明であるが、約1300年前、役行者が開山したと伝えられる。石鎚神社大祭山開きは7月1日から10日間。
「出羽三山」は推古天皇(593)の約1,400年前、32代崇峻天皇の皇子蜂子皇子が三山を開山。その後修験道の開祖役行者が登山。例大祭(花祭り)は旧暦6月15日。
「熊野三山」は開山年不明。平安時代中期から後期にかけて、天皇や貴族等の参詣を得て隆盛を極めた。
とあるように、それぞれの山にはそれぞれの開山伝説がありますし、月日までは特定されていませんが、こと白山では養老元年(717)6月18日と伝えられ、現在では新暦の月遅れ7月18日を奥宮大祭として開山記念祭をご奉仕しております。

むすびに

白山は昭和55年にユネスコエコパークに認定され、現在では環境整備と活用を目指すための核心地域と緩衝地域と移行地域と地域を拡大し、近隣県・市・町関係諸団体と協議会を設け、活動を活発化させています。
また平成23年には日本ジオパークにも認定され、昨年は白山ジオトレイルの開催など更なる世界ジオパーク認定に向けて活動しているところでもあります。
更には白山スーパー林道の出入口である、石川県白山市と岐阜県白川村間では100キロウルトラマラソンが行われ、約1,500人のランナーがさわやかな空気と風と日差しの中、雄大な白山の麓を駆け抜けました。
今年も夏山のシーズンを迎えました、白山の自然の豊かな恵みに感謝の真心を捧げ、事故も無く平穏に過ごしたいものです。

夏山開き前日の白山御安泰・登拝者安全祈願祭