神道講話383号「エコ」と環境
「エコ」とは
近年環境の話題になると「エコ」という言葉が出てきます。
この「エコ」とは、何なのでしょうか。辞書を引くと「エコ」は、エコロジー又はエコノミーの略語で和製英語であるとあります。
エコロジーとは生態学という意味、つまり生物の環境学との関係で「環境問題対策」として使われています。
一方エコノミーは経済のことで、環境と経済は繋がっていて、どちらか一方だけが発展しても、うまくいかないのであります。
環境問題を人間生活と自然との調和と考えることで、世界経済は発展し、人々が安全で豊かな生活を送れるようにとの思いを込めて「エコ」という言葉が使われるようになりました。
「環境の日」と「ユネスコエコパーク」
環境の日は、昭和47年(1972)6月5日からストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念して定められました。
そして、平成3年度から当時の環境庁の主唱により6月の1ヶ月間を「環境月間」とし、さまざまな行事が行われてきました。
ユネスエコパーク(生物圏保存地域)は、昭和51年にユネスコが開始しました。
ユネスコの自然科学センターで実施されるユネスコ「人間と生物圏」における一事業として実施されています。
日本ユネスコ国内委員会では、生物圏保存地域に親しみをもってもらうために、平成22年より「ユネスコエコパーク」と呼ぶようになりました。
人間と生物圏計画とは、生物多様性の保護を目的に、自然及び天然資源の持続可能な利用と保護に関する科学的研究を行うユネスコの政府間共同事業であります。
エコパークの三つの機能
- 保存機能(生物多様性の保存)
人間の干渉を含む生物地理学的区域を代表する生態学を含み、生物多様性の保全上重要な地域であること。 - 学術的研究支援
持続可能な発展のための調査や研究、教育・研修の場を提供していること。 - 経済と社会の発展
自然環境の保全と調和した持続可能な発展の国内外のモデルとなりうる取り組みが行われていること。
「白山」ユネスコエコパーク
国内のユネスコエコパークは、北から「志賀高原、白山、大台ヶ原・大峰山、綾、屋久島」の5カ所であります。(平成26年3月現在)
白山ユネスコエコパークは、富山・石川・福井・岐阜の4県にまたがっており、昭和55年にユネスコに登録されました。
白山は、世界でも有数の豪雪地帯で、高山植物をはじめ多様な動植物の宝庫となっており、白山信仰や山村の文化など共通項が多く、古くから多くの人々の信仰を集めてきました。
しかしながら白山ユネスコエコパークには、まだ移行地域が設定されていません。登録を継続するためには、本年(平成27年)末までに移行地域を設定してユネスコに変更申請する必要があります。
そのために4県7市村(富山県南砺市、石川県白山市、福井県大野市・勝山市、岐阜県高山市・郡上市・白川村)と関係機関により白山ユネスコエコパーク協議会が設立されました。
- 日本最西端の高山であること。
- 世界でも最南端に近い豪雪地帯であること。
- 多様な高山植物の宝庫であること。
- ブナ林をはじめとする動植物の宝庫であること。
- 山村の生活文化を育んできたこと。
- 四つの水系の源であること。
- 人々の信仰を集めてきた山であること。
- 私たちは、この白山の恵みを活かし、そして大切に守ってきたこと。
白山信仰
夏でも雪を被って白く見える白山は、近隣に高山がないため、遠方の平野や海上からもよく見えるため、古くから白山に対する感謝の思いが信仰の対象となりました。
白山の周辺地域の人々は、白山の恵みである水と土壌をもとに豊かな収穫を願い、農耕の神が宿る山として篤い信仰を寄せるようになったのであります。
8世紀の養老元年(717)に僧泰澄が初めて白山に登ったのが白山開山の始めとされ、平成29年(2017)はちょうど白山開山1300年を迎えることとなります。
白山信仰は日本全国に普及し、大正2年の内務省調査では、2716社の白山神社を数えます。
白山開山後、登拝の道は加賀、越前、美濃の3本が禅定道として発達し現在では、登山道として利用されています。
むすび
今年も夏山のシーズンを迎えました。
白山ユネスコパークを構成する環白山地域は、白山信仰の歴史や多様な高山植物、様々な文化を持つ魅力的な資源の宝庫であります。
共々に力を合わせ、支え合って「白山」の新たな魅力を創り出し、核として世界に発信していくことが子どもや孫の世代まで続く地域の発展に寄与するものと考えます。