神道講話389号「せい」と「おかげ」
はじめに
「越の白嶺(こしのしらね)」「白き神々の座」と称えられ、万葉集にも「栲衾白山(たくぶすましらやま) 風の寝なへども子ろが襲着(おそき)の有(あ)ろこそ 良(え)しも」(巻十四相聞)と詠じられているように「霊峰白山」は、西の最高峰として聳え、その分水嶺から流れ出ずる水は、石川県の手取川、福井県は九頭竜川を、岐阜県は長良川を、富山県では庄川の流れを満たし、それぞれ加賀平野、越前平野、濃尾平野、砺波平野を形成し、豊かなお水により命を育み、農業をささえ、工業用水から発電まで、数えきれない程の恩恵を頂いておりますが、このお水も一度荒ぶると、河川は氾濫し、大きな被害をもたらします。
また、地熱も適度に温かければ温泉となり、人々を癒やしてくれますが、火山の噴火となれば、大きな災害をもたらします。
いのち
今年も白山は夏山の登山シーズンを迎えました。
一昨年の御嶽山噴火による災害を受けて、活火山である「霊峰白山」も気象庁始め国土交通省、環境省、農林水産省、関係各県・市町村の方々と共々に防災会議で意見交換をし、人的・物的被害を最少限にくい止める検討をしています。
そのためには、まず携帯電話やスマートホンの活用のためのアンテナ建設と併せてヘルメットの携行、登山届の提出など、常日頃から「自分の命は自分で守る」意識を定着させることが必要であると考えます。
「せい」と「おかげ」
人は、何か悪いことが起これば「××のせい」とか「誰々のせい」というように、ついつい自分のことはさておき、他のものに責任をおしつけようとします。
しかし、本当にそうでしょうか。
「自分の命は自分で守る」ということは、全て自己責任であると思いますし、全て自分の意志によって考え、行動している訳ですから「人のせい」ではなくて「自分のため」なのであります。
遭難や怪我・事故などないように、必要なものは自分で装備しなければなりません。
古くなく新しいものをはく。古くなると沓底が傷んで、
壊れやすくなる。
●防寒着
充分に汗をかいたら、着替えも必要となる。
●雨具
通気性がよく、完全防水のもの。
●ラジオ
積乱雲が発生した時には、AMラジオに雑音が入るので
雷に注意。
●ヘッドライト
谷あいは、早く暗くなり、秋には四時頃暗くなる。
●食料(水筒)
非常食及び手軽に口入れられる飴などを準備。
●手袋
転んだ時に岩場で怪我をしないように。
●帽子
日よけ、木の枝から頭を守る。
●タオル(手ぬぐい)
汗ふき、止血などに使用。
自分の荷物を他人に預けたり、持ってもらったりした時、それは自殺行為といわねばなりません。
よく疲れた人の荷物を持って、サッサと先に行ってしまう人がいますが、持って行かれた側からすれば、食べ物(弁当)もなく、雨具もなく天候が急変した時には、正に最悪の状態と化します。
むすび
白山国立公園(特別保護地区)では、自然公園法(第21条第3項)に基づき、一木・一草・一石採ってはいけないし、持ち出してもいけない事は知られていますが、逆に持ち込みも禁止されています。
白山にもともと生育していない生き物が入り込むと、白山本来の自然生態系が失われてしまうといわれています。
自然は全て、別けへだてなく、光をあて、空気を与え、水を供給している訳であり、陰も日向もなく全て、平等なのであります。
つまり「自然のおかげ」「神様のおかげ」で、私達は生かされて生きているのであります。
美しい白山の姿を未来に残すために、1人1人の自覚が必要です。
特に「霊峰白山」といわれる国立公園「白山」の石川県側約1,700ヘクタールは、白山奥宮の境内地です。
ルールを守り、1人1人が気を引き締めて、自分の体力にあわせた安全で楽しい「白山登拝」を心掛けましょう。そして大自然の大いなる恵みに感謝したいものです。