白山比咩神社のコラム「神道講話392号」を掲載しています。

神道講話

392号「神道講話」にかえて

平成28年8月8日、天皇陛下におかせられましては「象徴としてのお務め」について、個人としてのお考えを述べられました。
このことを、報道各社は「生前退位」として大きな反響を呼びましたが、この「生前退位」という表現に対して、皇后陛下は平成28年10月20日のお誕生日に際し、「皇室の重大な決断が行われる場合、これに関わられるのは皇位の継承に連なる方々であり、よく御相談の上でなされたこの度の陛下の御表明も謹んでこれを承りました。ただ、新聞の一面に『生前退位』という大きな活字を見た時の衝撃は大きなものでした。それまで私は歴史の書物の中でもこうした表現に接したことが一度もなかったので一瞬驚きと共に痛みを覚えた」とのお言葉であります。
これは「退位」という文言はあやまりで「譲位」というべきなのであります。そして、天皇陛下は2010年の参与会議で初めてご意志を伝えられ、側近の方々は6年の歳月をかけて議論に議論を重ね、八月八日のお言葉になったのであります。
天皇陛下は、全国植樹祭や豊かな海づくり大会などで各地を行幸啓遊ばされる際、旧官國弊社と護國神社をご参拝され、各社に幣帛料をお供えになります。

天皇皇后両陛下(北陸中日新聞提供)

ご皇室の伝統継承者として、いにしえからかかさない神事を受け継がれ、新しい世界と日々新たなる日本の弥栄と国民の安寧を祈り、先の大戦にて尊き命を捧げた英霊に対しましては、はるばる東南アジアまでおもむき、花を供え、心からの礼を尽くされるお姿には、泪をかくせません。
自然災害で苦しむ人々には、その傍らに立ち、あるいは膝まづいて声を聞き、寄り添うお姿を拝するとき、心から「ありがたい」気持ちでいっぱいになります。
たえず国民と共にある陛下のお言葉を、私達は重く受け留め、御皇室の御安泰と国の隆昌、世界の平和を祈念し、この1年、この1月この1日一刻を大切に過ごしたいものです。

承詔必謹(しょうしょうひっきん)

◎十七条の憲法

604年、聖徳太子が定めた日本最初の成文法。憲法十七条ともいう。憲法とよばれているが、今日の憲法とは違い、和の尊重や天皇への服従など、役人や豪族などが守るべき心得を明らかにしたものである。

◎三条目の原文

「唐本御影」聖徳太子が描かれた肖像画 三曰。承詔必謹。君則天之。臣則地之。天覆地載。四時順行。万氣得通。地欲覆天。則致壞耳。是以君言臣承。上行下靡。故承詔必愼。不謹自敗。

(書き出し文)
詔(みことのり)を承(うけ)ては必ず謹め。
君をば則ち之を天とし、臣をば則ち之を地とす。
天覆ひ地載せて、四時順(めぐ)り行き、萬気通ずるを得。
地の天を覆はんと欲すれば、則ち壊を致さんのみ。
是を以て君言えば、臣承(うけたまわ)り、上行(ゆ)けば、下靡(なび)く。
故に詔を承(うけ)ては必ず慎め、謹まざれば自ら敗れん。

◎現代語訳・抄訳

第三条
天皇の詔勅が下ったならば、必ず謹んでこれを承らねばならない。
君臣の関係というものは、君は天であり、臣下は地のようなものである。
天は全てを覆い、地は全てを載せる。
故に四時の順行は穏やかに巡り行き、万事自ずから通ずるを得る。
地が天を覆わんと欲すれば、自然ならずして破壊に至る。
故に君が言を発すれば、臣下は謹んで承り、君が実践すれば、臣下は速やかにこれに従う。
故に詔勅が下ったならば必ず慎むべきなのである。
謹まざれば自ずから敗れるに至るであろう。