白山比咩神社のコラム「神道講話398号」を掲載しています。

神道講話

神道講話398号「日本人のこころ」

はじめに

本年は、明治維新150年という記念すべき年を迎えました。
私たちが明治150年を祝うということは、悠久なる日本の建国に思いを馳せ、幕末から明治にかけての歴史を正しく評価し、此の間に築き上げられた先人の経験と教訓とを現代に生かしてより広い視野と、より輝かしい希望を持って、日本の将来を無窮に祝福するところに意義があると思います。
明治の尊皇攘夷は、今様にいえば、日本の国柄の根本である皇室を中心として挙国一致の独立を護るということであります。私達も先人達の御苦労に応え、子孫に対する責務として現代の時弊を正して行くことが大切であります。

明治新政の精神

3月14日、明治天皇は親しく京都御所の紫宸殿(ししんでん)において、皇族及び公卿諸侯・百官をひきいて天神地祇をまつられ、次のように五箇条の国家統治の大方針を定められ、天皇おんみずから衆に先んじて、このことを天地の神明に誓われました。
この五箇条こそ長い封建を脱し、進取革新の原理を宣言されたものであります。
明治150年を迎えた今日、私たちは改めて五箇条の御誓文によって象徴される明治維新の大精神を想い起こし、真の日本人たる本質を取り戻さねばならないと思います。

五箇条の御誓文

明治時代、文明開化というのは、今まで東洋の小さな後進国に過ぎなかった日本が西欧の先進諸国が数百年もかかってつくり上げた近代国家の建設をわずか40年間で成し遂げた大飛躍の時代であります。
それは五箇条の御誓文の中の指導精神を基準として、明治憲法の制定、国会の開設、国民教育の普及、国防の確立、産業経済の開発、外交の展開などが行われました。
神社関係では、明治天皇が五箇条の御誓文を神前に奏上せしめて、神明に誓い奉った明治元年3月14日に祭典をご奉仕申しあげました。
国の方は明治「改元の日」を以て祝典を挙げることとなり、明治天皇は慶応4年8月27日に即位され、9月8日に改元されました。この9月8日は、旧暦でありますので、新暦に直しますと10月23日になります。
また、この改元は、9月8日の太政官の「被仰出書」というもので「即位大礼にあたり、先例通りに年号を改めるが、今後は、従来のように吉凶兆に随って改元するようなことはなく、一代一号に決定した」という意味の宣言がありました。

慶応4年(明治元年)3月14日、明治天皇は京都御所紫宸殿に公卿・諸侯以下百官を集め、維新の基本方針を天地の神々にお誓いになりました。
絵には副総裁三條實美が五箇條の御誓文を御神前に奉読する光景が描かれています。(提供/明治神宮)

むすび

ここに改めて明治維新というものを眺めてみるとき「大和民族」という自覚に基づいて、その指導精神に「神道」を立て、政治に於いては「神武肇国に還る」という一貫した指導原理を把握して「神ながらの国柄」という筋金が通っていたことを忘れてはならないと思います。
「温故知新」ということばがありますが、過去の歴史を検討し、その反省の上で将来の計画を打ち立てるというところに、はじめて進歩があるのであります。
そして、これが明治維新150年を祝う唯一の心構えであることを信じて疑わないものであります。