白山比咩神社のコラム「神道講話415号」を掲載しています。

神道講話

神道講話415号「家内安全」

◆ はじめに

常々初詣や月詣りには何気なく家内安全を祈願します。 辞書で見ますと「家内」とは家族のこととか、家の者全部とか、家の中や家族の人々、そして自分の妻を相手に紹介するときの呼び名などとあります。
では「家族」とはどういう定義かというと、一家・親族あるいは一族の仲間、そして「ともがら」とあります。 ちなみに神社の祝詞では「うから」(親族)「やから」(家族)として使います。 そして兄弟・姉妹を「はらから」(同胞)といいます。
私達は1人の人間には2人の親があり、2人の親には4人の親がいるように逆昇っていくと25代で33,554,432人の親があって初めて自分の存在があります。 そのうち誰一人として欠けたならば自分は存在しないのであり、だからこそ親やご先祖を敬い、大切にしなければならないのであります。 そしてその家々のつながりを血統とか、家系として守って来ました。

初詣にて家内安全を祈る

◆ 「おばあさん」

先般、とある駅の改札口で駅員さんが「ちょっとそこのお婆ちゃん」と1人の老人に声を掛けていました。
そうするとその老人は「お婆さんとは誰のことですか?私は貴方みたいな孫は持った覚えはないし、ましてや人の年齢も知らないでお婆さんとはなんてことを・・・」と反論していました。
誰でも年をとればお爺さん、お婆さんになるのですがどの年齢で区切られているのでしょうか。 とは云うものの、初老を過ぎ、還暦を迎え、年金を貰うようになったら老齢ということなのでしょうか。
齢を「よわい」と云いますが
  「古希」(古来稀なりといって70才)
  「喜寿」(喜という字を略して書くと歖となり77才のことです)
  「傘寿」(80才の八十をくっつけて書くと仐という略字になります)
   88才は続けて書くと米という漢字になりますので「米寿
  「卒寿」も(九十を続けて略字で書くと卆になるので90才)
  「白寿」は(百の文字の上の一がないので99才で白となります)

◆ 一人っ子

その昔、中国では人口調整の為に一人っ子政策をした事は記憶に新しいことです。
逆に日本は少子化の為、子供が生まれたら補助金や奨励金を支給していますが、一人っ子政策はその子が結婚となると、一方の家系が途絶えることになります。
兄弟姉妹がいないとすれば「いとこ」(従兄弟)とか「はとこ」(再従兄弟)=「またいとこ」(又従兄弟)という名称さえ使われなくなります。 両方の親が互いに「いとこ」どうしである子の関係などの家系が崩壊してしまいます。
おじさん」、「おばさん」も同様です。
先のお婆さんの話のように血縁のないよそのおじさん、おばさんの呼称になってしまいます。
本来のおじさんは自分の親の兄弟の男性で親の兄は伯父(おじ)、親の弟は叔父(おじ)となります。
おばさん、つまり女性の場合親の姉であれば伯母(おば)、妹であれば叔母(おば)と書いておばさんと読むのであります。
ちなみに親の兄弟、姉妹が生んだ男の子は(おい)で女の子は(めい)といいます。

備考) ① 肩書数字は親等を示します。 ② 点枠は姻族を、偶は配偶者を示します。

◆ むすび

現代は少子高齢化といわれますが、日本は古来から家族・親族・縁者・身内・親類など多くの類義語があるように、親につながる家系・血統・血筋を大切にして来ました。 そして血のつながる家系全てが平穏無事に生活出来るように家庭では神棚を整え、神社に詣でて「家内安全」を祈ります。
今年は特に新型コロナウイルスの蔓延により春先から初夏にかけて不要不急の外出を避け何事も「自粛」を強いられましたが、それでも当社では、盛夏から秋にかけて疫病退散、家内安全の祈願で来られる方々も多く見られます。
まだまだ新型コロナウイルスの感染が終息する気配はありません。
インフルエンザも気になるところではありますが、各々自己管理、自己防衛に心がけ、マスクの励行、手洗い、消毒をし、自分はもとより、家族・身内の無病息災を神仏に手を合わせ、「家内安全」を祈りましょう。
新しき令和3年もあとわずかでやって来ます。
幸せ多き良き年をお迎え下さい。