神道講話425号「自然」
◆ はじめに
近年「自然災害」がよく取り上げられています。地震、土砂崩れ、風水害、津波・・・。それは、自然現象によって、災いが起こったことによります。時は止まる事無く、自然現象も止まる事はありません。
その自然に対応できなくなって、人の命が失われたり、家屋や施設・橋などに被害が出た時には、それを自然災害といいます。
しかしそうでしょうか。自然は時と共に日々新たに刻々と姿を変えてむしろ進化するのであります。
◆ 災害とは
何か災害が起こると①「想定外」とか②「不測の事態」③「不注意」とか④「脇が甘い」とか⑤「万が一の出来事」として言い訳、反省を繰り返し、それでも自分に直接影響が無い事を良しとして「他岸の火事」と注意を怠るのであります。
地球の温暖化による海水の温度の上昇は、私たちの生活から出される二酸化炭素により、大気が不安定となり、局地的に線状降水帯をもたらし集中豪雨によって土砂崩れが発生しますが、この土砂崩れも戦後の植林事業により植えられた樹木が、60年間手入れも枝打ちも下草刈りも間伐もしないでほったらかしにした為に、山がやせて保水力もなくなり、植樹も広葉樹ではなく針葉樹であるが為の災害が多いように思えます。
◆ 自然に順応
私たちはどれだけ自然を理解しているのでしょうか。
季節が夏を迎えますので、少し白山の自然に触れてみたいと思います。
○カエル
カエルは雪が溶けて春の田起こしと共に冬眠からさめて鳴き出し「オタマジャクシ」からカエルに成長しますが、種類によっては白山の山にも「ヒキガエル」が生息しているのですよ。黒ボコ岩からその下あたり(海抜2000m付近)でも生きているのです。
○ウグイス
ウグイスも春、梅の花咲く頃から桜の咲く4月頃は、本宮境内や舟岡山・旧社地の古宮公園でやっとの思いで「ホウケッケキョ」と鳴いていますが、そのウグイスも6月から7月の春山から夏山にかけて別当出合から甚之助小屋・南竜ヶ馬場水平道付近まで昇って「ホウホケキョ」と上手に鳴いています。
○赤トンボ
赤トンボは夏山の8月末あたりには茶色の胴体で室堂(海抜2450m)あたりを飛んでいますが、これが秋山9月頃から一気に下山し、胴体は真っ赤になり里々へ降りてきます。「アキアカネ」という名もそこからきているのでしょうか。
◆ 自然の節理
千里浜「なぎさドライブウェイ」の一部が消滅し、年々砂浜が痩せ細っていく様は、何とも寂しいものであります。
千里浜の砂は、手取川によって白山から運ばれてきた事は知らない人が多いかもしれません。
海水浴や波打ち際のドライブを楽しめるのは遠く離れた「白山」のおかげといっても過言ではありません。
飲み水・農工業用水はもとよりその恩恵は計り知れません。
歴史を考え、現実を直視し、現在の環境変化の影響をもう一度考える時期にきているといっていいと思います。
◆ 瑞雲
自然の美しさの中に先日新たな発見をしました。
4月30日のことです。東京から訪ねてきた甥が「綺麗な虹」と南の空を指さすのであります。天気は晴天、雨もなく、こんな良い日に虹なんてあり得ないと思いましたが、正に水平にたなびく虹のように見えます。
すると傍らの女性が始めて見たけど、あれが「彩雲」というのではありませんか?と。翌日の新聞に掲載された記事では、南の空に虹のように輝く直線上の光の帯が見られた現象は「環水平アーク」と呼ばれる珍しい大気光学現象で、太陽光が巻層雲の氷の粒を通る際に、プリズムの原理で七色に分離して起きる現象だそうで、今回は約1時間ほど続きました。
調べて見ると、この「環水平アーク」は「彩雲」とも「瑞雲」「慶雲」「紫雲」などといい、吉兆の現れともいわれいます。
◆ むすび
5階の窓から眺める景色は、静けさの中に聞こえる鳥のさえずり、手取川のせせらぎの音は、何にも変えがたくさわやかで心地良い。白山の残雪の白と、近隣の山々の深緑、そして時々ただよう雲のゆっくりとした流れに、それをさけるように飛ぶパラグライダー。5月の末には「麦秋(麦が実ってさながら秋の稲穂のように黄色に一面を染める景色)」に、加賀平野は田植えの後のキラキラと水を満々と湛えた水田も7月には稲穂が生長し、瑞々しい青々とした沃野は、「今、正に生かされて生きている」といった感情がわきたっています。
朝、東の空が白く染まり、獅子吼の山からのお日の出を拝する時、「おはようございます。令和4年7月○日、今日1日を大切に生きます。神様のお護りを!!」と手を合わせ、夕暮れ・日没には「今日1日ありがとうございました」と又、手を合わせ、やがて東の空にお月様が現れた時には、今日1日の反省と御皇室のご安泰、家族・職場の皆が健康で過ごせた事に感謝すると共に、氏子崇敬者の安寧又、この世にはびこる新型コロナウイルスの1日も早い終息を願い、元気でいることが当たり前ではなく「有り難い」ことを実感しています。
そして、外(と)つ国の戦(いくさ)の1日も早い和睦と戦渦に遇われた人々の物・心共々の立ち直りを願い、陛下が常に国民の安寧、世界の平和・共存共栄と我が国の隆昌を祈る心を心とし共に雨・風時に従い、自然にさからわず防災に努めたいものです。