白山比咩神社のコラム「神道講話428号」を掲載しています。

神道講話

神道講話428号「日本三名山「白山」」

画家 池大雅筆「山岳紀行図屏風」 白山箇所抜粋 京都国立博物館蔵


◆ はじめに

富山県の「越中おわら節」では、「♫ 越中で立山、加賀では白山、駿河の富士山、三国一だよ」と歌われていますが、では誰が日本三名山と言ったのでしょうか。
全国には「日本の三○○(何々)」と言って食品だとか、地名がいわれておりますが、それはいつ頃、だれが名付けたか判りません。しかし、日本三名山としての富士山・立山・白山は、調べてみますと江戸時代に橘南谿という江戸後期の医師・随筆家が、「名山論」で紹介しています。
「他邦の人に逢えば、必ず名山を問うに皆各々その国々の山川を自賛して、天下第一といふ。甚だ信じ難し」(人は皆、他のことを知らずに『我国がいちばん』と声高らかにいうんですなぁ)と言って、やはり富士山・立山・白山は、三名山だと指摘しています。
また、画家池大雅は寛延二年(1749)に初めて富士山に登り、翌年立山及び白山に登っており、「三岳紀行」として日本の三名山を紹介しています。
また、白山の記述は、十返舎一九も「金草鞋」でとりあげられているし、「加州白山参詣」「白山遊覧図記」にもとりあげられております。
紀貫之は「こしなりける人に遣わしける」として「思ひやる 越のしらやましらねども ひと夜も夢にこえぬ夜ぞなき」(古今集)と詠っております。
ちなみに日本三大霊場とは「比叡山」「高野山」そして「恐山」をいいます。
もともとは日本の山々は、特に秀麗な山容で古来より火山として恐れられながら人々の美と水の信仰の対象となっておりました。荒ぶる火の神を鎮めるのが水の神であり、火の神、水の神を祀ることで噴火を鎮めようとしたのであります。

◆ 自然の恵み

近年相次ぐ地震や火山の噴火、また大雨による土砂災害が繰り返し発生し、自然の恐ろしさを感じておりますが、寒気が流れ込む雪の季節を迎えると、逆に大地のぬくもりが、私たちの心を暖めてくれます。
日本には、多くの火山帯があり、それに沿うように温泉地があり、神代の昔から湯治の伝統が息づく温泉大国であります。

◆ 白山火山帯

新詳高等社会科地図の構造地形区分・火山帯を見れば、日本列島を横断している糸魚川・静岡構造線(フォッサマグナ西縁)と日本列島を縦断する中央構造線にはさまれた内帯に位置する「白山火山帯」は、東が石川県白山から西は九州長崎から五島列島まで広範囲にわたり、この火山帯に反って加賀温泉・城崎温泉・皆生温泉・玉造温泉・湯田温泉・別府温泉・嬉野温泉・島原温泉が列なっております。(図参照)
この高等学校の地図帳でも分かるように白山の恩恵は、正に「火の神」と「水の神」のお陰といえます。
昔(いにしえ)より白山信仰は、畏怖と畏敬によって崇められてきました。

フォッサマグナ

◆ 現今の白山

白山唯一の万年雪である「千蛇ケ池」(手取川源流)・境内地の雪渓が10年平均で、30年前の70%から半分程度まで縮小傾向にあることが、北國新聞社の手取川環境総合調査で分かりました。
白山山頂御前峰の西側に位置する標高約2570メートル付近にある千蛇ケ池は、くぼ地に雪が積もるため直射日光が当たりにくく、秋まで溶けずに残った雪が越年する絶景として登山者に親しまれておりますが、登山者からは年々雪渓が小さくなっているとの指摘があり、この度、水・土砂循環グループの小川弘司石川県立大学客員研究員らの調査計測で明らかになりました。
これは地球の温暖化の進行が強く関連していると思われ、専門家は高山帯の生態系に及ぼす影響を含めて因果関係を詳しく調査しております。

千蛇ヶ池万年雪

◆ むすび

昨年7月に奈良県で開催された全国知事会に於いて石川県の馳浩知事は、静岡県川勝平太知事と、富山県新田八朗知事とで、日本三名山としての連携と協力に関する協定を結ぶ方向で調整、広域観光の活発化と共同事業の開催も視野に検討を始めました。
石川県では「白山手取川ジオパーク」世界認定を目指し、スポーツ観光面での連携や学術シンポジウムなどの開催も計画されています。
時、あたかも本年は国民文化祭が石川県を会場に開催されます。
昨年は、白山国立公園指定60周年の佳年を迎え、そして明治5年に女人禁制が解かれ、明治6年に女性が初めて白山登拝をされてから150年になります。
改めて日本の三名山の一つである霊峰白山の恵みの有難さや、三名園の一つである兼六園、そして日本の三銘菓のひとつ長生殿など、石川県加賀の国をより深く理解し、国民文化祭を共々に盛り上げたいと思います。

日本三名山