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コラム[column]〜種を守ること〜
石川県議会では超党派の議員提案にて「県主要農産物種子条例」が制定されました。
令和2年3月23日の本会議にて全会一致により可決・成立し、同年3月26日に公布・施行されました。この条例では種子の原種の生産、人材育成、財源の確保を県の責務として行うこととしています。
平成29年に国は「主要農産物種子法」いわゆる「種子法」を廃止し主要農産物(米、麦、大豆)の種子の開発、供給に民間の参入を促すこととなりました。
そもそも種子法では「・国家が管理した種子を安定的に供給し、食料の安定供給を確立する。・種子の開発、育成、改良に必要な莫大な資金を国家の関与により政策として行える。・種子の生産を都道府県が行うため、その土地にあった品種を生産できる。」といった、農業の根幹である部分を昭和27年の制定以来守り続けて来ていましたが廃止により民間の参入がしやすくなった反面、都道府県の財政状況によっては種子の安定供給が困難となり、安い外国産や将来的には遺伝子組み換えの種子等を使用せざるを得なくなり、品質、生産量の低下につながってしまう恐れがあります。
また、一部の企業の寡占により、「種の集中支配」を招き種子価格の高騰を招きかねない等、様々な問題を抱えており、そのため各地の自治体でも、従来の種子法に準ずる「種子条例」を制定し、種子の育成、開発、また従来の主要農産物に加えて蕎麦などのそれぞれの地域に見合った作物の生産を奨励するなど地域の農業を自分達で守っていく体制が作られようとしています。
種子法廃止の背景には「国、都道府県が民間企業の参入を阻害している」という理由の他に海外企業の参入をしやすくするという面があります。
平成28年頃に取り沙汰されたTPP等のグローバル化の流れにも起因しているともいえます。
反面、アメリカやカナダでは自国産の小麦の種子農家の保護政策を進めるなど種子法廃止は世界の流れに反するという側面も持ち合わせています。
また、都道府県に対しては廃止後も種子生産に予算が確保されるよう付帯決議が採択されるなど行政に対しては種子生産を促してはいますが、この根拠となった法律が廃止になっている以上、安定性があるとは言えない状況となっています。
また政府は種子の開発元の権利を守る「種苗法」を改正し、日本企業の種子を保護する方針を示していますが、農家が作物の一部を採取して繰り返し育てる「自家増殖」を原則禁じるなど、農家の権利や地域に即した在来種を守る視点にかけるとの見方もあります。
食物の安定生産は我々の命の根幹に関わる問題でもあります。
自分の口にするものに対してこれまで以上に関心を持つことが重要です。
記:上田健太郎